おもろい巨塔


先日病院に行ってきた。
埼玉は入間地区在住の人なら知る人ぞ知る大病院「武蔵野総合病院」だ。
昨年四月に手術した後遺症のための薬をもらいに行ったのだ。
この病院はでかいくせに医者がフレンドリーなので好きだ。
右ヒザをケガして最初に行った近所の整形外科では、
ヨボヨボのおじいちゃんが「こ、この右ヒザの皿が欠けている・・・」と、引退宣言ともとれる何言ってるか分かんない診断をし、
隣にいた看護婦さんが違う病院を紹介してくれた。じっちゃん・・・。
次に訪れた「埼玉医大付属病院」はまさに埼玉の「白い巨塔」。
女版財前が血でパンパンに腫れたオレの右ヒザに一閃、注射器を挿入。
一気に血を抜いてナイスな応急処置。
そして次の一言。
「これから違う病院紹介しますね〜。」
・・・そんなオレのヒザ悪いの?責任逃れ?いや、うちの親は片瀬さんばりに訴えたりしないっすよ。
だからここでお願いしま・・・
処置より早く財前は推薦状を書き上げやがった。
もう二度とてめぇらにはたよんねーよ!バカ!

そんなこんなで紹介されたのが武蔵野総合病院なわけだが、ここの医者は一味違った。
まず、オレと一番関わった人物が「野沢医師」。
こいつ、もといこの方がマジでいかしていた。
何をどう間違ったのか、最初の質問はケガについてではなく、
「どこの大学行ってんの?」オレが驚きを隠しつつ大学名を言うと、「ヴォイ、マジかよ、すげーじゃんホリグチく〜ん。」
こ、こいつは・・・。
「今度合コンしようぜ!!」看護婦爆笑。
オレは右ヒザのことを諦めることにした。
ところが合コンの予定が成立(でっち上げ)した直後、野沢医師はいきなり真面目モード。切り替えはえぇ・・・。
オレは右ヒザのことを諦めないことにした。「本物」に会えた気がした。

そして手術の日、二人目の戦士が登場した。
「茂木ちゃん」である。
彼は不精ひげにボサボサ頭の冴えない風貌。
しかし手術台の上で下半身麻酔を打たれて手術を待っていたオレに向けて言った一言はあまりにも衝撃的だった。
「目ぇ隠すと福山雅治に似てるよなぁ。」オレは右ヒザを諦めたくなった。
すかさず野沢医師「学習院だもんなぁ、合コンしまくりよ?ヒザこのままにしてやろうかなぁ。」
オレは完全に右ヒザを諦めた。グッバイ右ヒザ。
なぜかMr.Children『シフクノオト』が流れる手術室。
それに合わせて鼻歌を歌う茂木ちゃん。
全てを諦めたオレには心地いい空間であった。思わず居眠りしてしまうくらい。
起きるとBGMは美嘉さんの『LOVE』に。そして手術も佳境に。
二人のバカコンビは先ほどまでとは全く違う表情をしていた。職人の顔だ。
意識をオレの右ヒザに集中させている。これが出来る男なのだ。
オレは感動した。
脇で見ていた麻酔科の益井さん(マジで)も「おぉ、すごいもんですねぇ。」なんて。こいつも間違いなく出来る男だ。
そして、手術終了。
「ホリグチくん、終わったよー。」オレはほぼ素っ裸の状態で、恥ずかしさも忘れ、ただただ感動していた。
出来る男たちの仕事ぶりに。
だがオレはそのとき忘れていた。
出来る男たちは、アホなお笑い芸人だったことを。

手術は無事成功。
手術二日後に病院の廊下で豪快にこけて、その病棟のナース全員にマジな心配をされ不安になったが、なんとか術後の経過は順調だった。
そして退院後も週に一度通院を続け、回復を待つことになった。
例の野沢医師の担当は水曜と土曜だったので、なんとか避けようと試みたものの、どうしても学校の都合でヤツがいる日になってしまう。
ここでオレが診療を受ける際の名場面集。ノザワコレクション。

@部屋に入りイスに座ると、すげーだるそうにサントリー烏龍茶を飲みながら「おぉ〜、来たかぁ〜」
 (別に来たかねーよ!)

A名前を呼ばれて部屋に入るがヤツがいない。そしておもむろに振り返るとドアの影に隠れているエリート整形外科医の姿が。ナース爆笑。
 (この病院は・・・!)

B部屋に入った瞬間「ハイ、チーズ!」カシャッ!思わずピースしちゃったよ!アホかっ!ナース爆笑。

Cそして毎回「合コンだよ、合コ〜ン!!やろうぜ〜!」帰っていいっスか?


ちなみにこの野沢医師と強力なタッグを組んでいた最強ナースがいて、見た目は肝っ玉母さん。
そして野沢医師と対等に渡り合ってるってゆーかむしろ押し気味。
しかも@〜C全てに加担している極悪人だ。なんなんだよこの病院は!
でも、すげー心地いい病院だったなぁ。
心地いいってのも変だけど。入院中も、通院中も、ストレス感じなかったしさ。
おかげですっかり良くなりました。ありがとうございました。

ちなみに今でもたまにヒザは痛むが、それはオレのケア不足で、ホント、ここまで治したあの職人たちはマジですごいよ。
一年ケガするのが早かったら医者目指しちゃうとこだったよ。全く。

そして今日、久しぶりに野沢医師と再会した。
ヒザに今まで感じたことの無い痛みが走ったから診療を受けにきたのだ。
オレはすげー心配だったから、テンションも低めだった。
ところが、部屋に入ってヤツの第一声は、
「おい〜っす、彼女できたか?コノヤロ〜久しぶりじゃねーか!」
今度はケガが治る気がした。

(2005年2月)


合コンは、しますん。
inserted by FC2 system