南新宿ジンギス祭り


金曜日の夜。それは社会人にとってまさに「癒し」の瞬間。
だが、今宵新宿駅南口に降り立った三人の男達(物理科)は、社会人より過酷な一週間を過ごしてきた。
一人はバイト、にゃんにゃん、実験、にゃんにゃん、実験、お好み焼きにゃんにゃん。
もう一人は部活、にゃんにゃん、部活、にゃんにゃん、実験で11時(夜だよ)まで、そしてにゃんにゃん。
想像を絶する過酷さである事は、たとえ政治学科であろうとも想像する事はたやすいはずだ。
だって11時だよ!?部室閉まってんだよ?でも理学部棟は開いてるんだよ?いや〜って感じ。
そして残る一人、つまりオレだが、オレの一週間はさらにファンキーなものだった。
部活、バイト、実験。ちなみに、にゃんにゃんは無い。
ホント意味が分からないくらい忙しくて、もはやオレの思考回路は三つのことしか考えられなくなっていた。
「分かった、分かったからおっさん死んで。」
「腰が痛いですがなにか?」
「シ゛ッケンタノシイナー。」

激動の一週間の終わり、金曜の午後は、物理科にとっても最高の「癒し」なのだった。
10月7日、眠らない街に癒しを求めたのは、癒しプロデューサー、片田舎つくばエキスプレス・りょーちん。
Mr.縦横無尽、イケメンキング・トシキ。そしてアンチホットステーション、NANAがものすごく観たい男・ホリの三人。
皆ボロボロだった。そんなオレ達が求めたのは、仙豆でも、サイヤ人御用達の回復装置でもない。
肉なんだ。
それもただの肉じゃない。羊の肉なんだ。
どうやら僕たちは、
「じんぎすかん」という名の料理を食べに行くらしい。
そんな予感がオレ達の心を早くも踊らせた。
午前中から頭の中は羊でいっぱい。昼休みも落ち着かない様子だ。

そして夜、出発の時を迎えた。
みんな目白駅からテンション高め。キングに至っては新設された「Suica専用改札」を、普通の定期で通過しようとしたくらいだ。
そんなこんなで眠らない街、眠らせない街新宿に到着。
程なくポルノ映画がひしめく通りに、目的の店を発見。
キングは興奮を隠しきれず、
「どれ観よっか!!?」とポルノ映画の選定にかかる。そっちじゃねぇ!!

んで、入店。とりあえずいい匂いですでに我慢の限界。運ばれる肉に限界点突破。
え、食べ放題ですか、そうですか。え!?飲み放題ですか!!?生ビールですか!!?
りょーちん、さすがだよあんた・・・。君に店を任せておけば間違いない。敏腕プロデューサーだよホント。
一回変な店を予約されたときにはどうしようかと思ったけど、これで信頼は抜群に取り戻したね。

で、まずは迷い無くビール。
乾杯!!・・・・・・・・
うっまー!!
駆け抜けたよ
何かが。 何かが駆け抜けたよ。

そしていよいよ主役登場。ジンギスカン!
冷凍されたダイナミックな肉と、山盛りてんこ盛り松乃屋のキャベツばりの野菜が運ばれてきた。
どうやら熱した鉄板(風味)にまずはラードを塗る。そして野菜。次に肉を隙間無く並べていくらしい。
だが、ほぼ全員初体験ということで、そんなことお構い無しにハシャギまくる。
なんとか収拾をつけて第一波完成直前。う、美しすぎる・・・。

これでしばらく待つだけ。すると肉の色がどんどん変わっていき、野菜はいい感じにしんなりして完成となるわけである。
しかしケロッグコンボばりに「もう我慢できなーい」野郎共。特にキングはいつ食いにかかってもおかしくないほどの勢いだった。
そして・・・・「いきますか!!!」誰からともなくかかったスタートの合図。
食。
・・・わずか二十秒くらいで、第一波はほぼ殲滅された。
味はねぇ・・・え、なにこれ、
うまいんですけど。って感じ。
もうね、肉と野菜のコラボレーションがヤバイ。肉だけだったらきっと飽きてしまうところもをきっちり野菜のあっさり感がカバー。
まさに全員野球。タレも激ウマだし、ビールもヤバイ。誰一人欠けてもこのうまさは生まれない。素晴らしいチームワークをオレは見た。味わった。
さすが北の大地北海道。さすがは駒大苫小牧。さすが新党大地。
そしてなにより忘れちゃなれねぇ、そう、お前らも最高だよ!!お前らと食いに来てよかった・・・
なんて思う暇は全く無く、その後も一切の妥協も許さずに食いまくる。肉と野菜の乗った皿が結局計七波(くらい)。
合間にビールも飲みまくり。・・いや、やっぱり肉中心だから多少抑えたわ。

あまりのうまさに、普段全く「手伝う」という概念のないキングやオレも、思わずジンギス作りに参加する。
途中で「ご飯が食べたい。」と言ってきたおっさん・りょーちんのわがままに応えたのは「塩にぎり」。このシンプルな一点の曇りも無い「米」すらうまかった。
当然残りの二人も迷わずオーダー。

あぁ、ヤバイ、全てがうまい・・・。
なんかもう、羊さん参りました。あざーす。としか言えないわ。

時々、もう牛とか輸入しなくていいやってオレは思うんだ。本気でさ。
松屋の豚めしは普通にうまいのに、牛めしは一向にうまくならない。
吉野家は豚のしょうが焼き定食でなんとかメンツは保っているんじゃないのか?
ローソンにはからあげくんがあるから十分さ。
そしてなによりこの世には、「ジンギスカン」っていう、ハンパない料理があるんだから。
牛ってなんだい?羊なら知ってるけど。
そんな世界になる日も、そう遠くないだろう。

てゆーか人生はプラスマイナスゼロ。一日の中でもそれは言えるわけで、その日の帰りは豪雨に襲われました。
フッ、天はよほどジンギスカンを食ったオレに嫉妬しているんだな、なんて。


牛の肉でジンギスカンやったらどうなるんだろうって、時々オレは本気で思うんだ。
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