この世の外へ クラブ進駐軍(03年)

監督 阪本順治
主演 萩原聖人、オダギリジョー、MITCH、松岡俊介、村上淳


戦後の日本を、音楽で生き抜いていく男達の話。
ちょうど戦後60年目の夏に観ました。偶然とはいえ、やはり思うところはありました。
戦後って一番危うい時期で、生きていくのが一番大変な時期なんだってことも分かりました。

終戦をフィリピンで迎えた広岡(萩原聖人)は日本に戻ると、友人の平山(松岡俊介)らとジャズバンド「ラッキーストライカーズ」を組み、 米軍基地のクラブで演奏をして、生計を立てていた。
勝った国と、負けた国。その構図がふとした瞬間に感じられて、とてもリアルだった。これが戦争なんだなって。
でも音楽をやってるときの彼らはとても楽しそうで、戦後の暗さが感じられなくてよかった。

冒頭が少し雑で、いきなり気付いたらバンド組んでるし、ドラムを叩いたことも無かったオダギリジョーが、いきなり巧くなってたりとか。
ちょっとそういうところは気になった。
でも中盤辺りから、ストライカーズが基地では禁忌の『ダニーボーイ』を演奏した辺りから、俄然良くなったと思う。
バンドメンバー五人にそれぞれバックグラウンドがあり、それを全部表現しきれるのかなって思ってたけど、それも結局うまくまとめてるし、さすがです。
特によかったのは、ピアノの大野(村上淳)のエピソード。彼は戦争で離れ離れになってしまった弟のために金を貯め、行方を捜していた。
その頃弟は貧民街(?)みたいなところで生活していたんだけど、最初弱かった弟に「強くならなければダメだ」と教えた片足の男がよかった。
抜群にカッコよかった。池内万作いい仕事しましたね。
そして戦後の日本は一歩間違えただけで、いい方にも、悪い方にも簡単に変わってしまうという怖さも感じた。

それから物語の終盤、朝鮮戦争が始まった。そのため基地の米兵も派兵される。
広岡たちと仲良くなったジャズ好きの米兵も。そんな彼は日本を去る前、広岡に自分で作った曲をプレゼントする。
それからまもなく、彼は戦死してしまった。
広岡たちは彼のために、基地で彼の作った曲を演奏する。曲名は『Out of this World 〜この世の外へ』。
心に響くメロディーと、詞でした。
そして戦後の日本の話なのに、最後は朝鮮戦争で終わる皮肉もオレには痛かった。
戦争なんてやめてくれよって、そんな簡単で単純なことを、オレは思った。
でも音楽は世界を変えられる、という夢みたいなことも、オレは思った。多分変えられる。

しかし萩原聖人はじめ、みんなカッコよかったわ・・・。
松岡俊介演技巧すぎ・・・。


「そのスティックは、飯食うための箸なんだよ。転ばないための杖なんだよ。」


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