トニー滝谷(04年)

監督 市川準
主演 イッセー尾形、宮沢りえ、西島秀俊(ナレーション)


「トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷だった。」

俳優、西島秀俊の、淡々とした、寂しげな語りによって綴られる、一人の孤独な男の話。
トニーは孤独だった。でも一人でいる事を寂しいと思った事はなかった。
常に孤独だったトニーは、ある日一人の美しい女性と出会う。そして彼は人を愛する事の喜びを知る。
しかし幸せな時間はふとした出来事のために終わってしまう。
そしてトニーは、大切な人を失う切なさを知る。

残ったのは、彼女が買ったたくさんの洋服。それを彼は、彼女と体型のそっくりな女性を雇い、 毎日残った服を着るように頼む。愛する人を失った悲しみを、少しでもやわらげるために。
「とりあえず、一週間分の服と靴を選んで、持って帰ってください。」
しかし、一人で、たくさんの洋服を眺めているうちに、考えが変わった。
「あなたが持って帰った服は全部差し上げます。だから、このことは忘れてほしい。」
そして残りの服も古着屋を呼んで引き取らせた。彼女が残したものは、なにもなくなってしまった。

その二年後、トニーの父親が亡くなった。父が残した大量のレコードを、やはりトニーは処分した。
トニーは本当にひとりぼっちになってしまった。今度こそ。

孤独には慣れている。慣れているんだ。なのに・・・。
トニーは何故か、服をあげた、妻にそっくりの女性のことが忘れられなかった。自ら孤独になったのに・・・。
そしてトニーは、名前も知らない彼女に、電話をかける・・・。

坂本龍一の、悲しげな音楽、広川泰士による美しい映像。
描かれているのは、「孤独」だけではない。人を愛する喜び。なぜならば、この映画はハッピーエンドなのだから。


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